「離婚時に決めていた養育費を支払ってもらえない…」
「養育費を勝手に減額された…」
「今月の養育費を待ってほしい、と言われて3か月がたっている。…」
今回の記事では、相手から養育費を支払ってもらえない場合に取りうる対応を説明します。
子どものいる夫婦が離婚する場合の大きな決め事の一つが「養育費」です。
そもそも養育費とは、親権をもって実際に子供を育てる親が、収入のあるもう一方の親から毎月受け取ることになる子どもの教育や生活のために必要となるお金のことです。
養育費は、離婚するときに、子どもの数・年齢と双方の親にの収入に応じて、裁判所が公表する養育費算定表に基づいて決めることが一般的です(当事者で決めるのが原則ですが、決まらなければ裁判所の審判手続、判決手続で決まることになります)。
しかし、一度決めた養育費も後になって支払ってもらえないことが多くあります。
この場合、とりうる対応策としては2つあります。
①任意で取り立てる方法 ②裁判所の手続を利用して強制的に取り立てる方法 |
①任意で取り立てる方法
まず、任意で取り立てる方法です。
一言でいうと、「支払ってほしい」と直接、対面、電話、メールなどで直接伝えることです。
しかし、払ってほしいと言われてすぐ払うなら苦労しないでしょう。
この場合には、「弁護士名義」で内容証明郵便を送付する方法等があります。弁護士名義だと、も支払わなければ裁判手続を利用される、と印象付けられるので、心理的なプレッシャーはかけることができます。
もっとも、あくまで「任意」の請求にとどまるので、後述の②裁判所の手続を利用して強制的に取り立てる方法が取れるのであれば、そちらを進める方が効果的でスピーディです。
②裁判所の手続を利用して強制的に取り立てる方法
次に、「任意」の支払ではなく、裁判所の手続を利用して強制的に取り立てる方法があります。
裁判所の手続には(1)履行勧告の手続(履行の確保の手続)と(2)強制執行があります。
(1)履行勧告の手続は費用は掛からない一方で、あくまで任意の支払いを促すだけなので、あまり強制力がないというデメリットがあります。
相手の支払いが滞っている場合には、多少の費用は掛かるものの、(2)強制執行の申し立てがより良い選択肢となるでしょう。
ただし、(2)強制執行の手続を執る場合でも以下の2つの注意が必要です。
〇養育費支払が債務名義として合意されていなければならない
(調停調書や公正証書といった公的文書で養育費の支払いが合意されていなければならないということ)
〇差し押さえるべき相手方の財産を指定しなければならない
(勤務先の給与や預金通帳などの財産を差押え時に特定しなければならないということ)
そのため、口約束等では、すぐに養育費を差し押さえることはできず、まずは調停を申し立てたり、公正証書とする必要があります。
しかし、後になって養育費の支払いの債務名義を準備することは非常に時間と手間がかかります。
そのため、養育費の不払いを防止するという意味で、離婚する際にきちんと後のトラブルを予防できるように、調停調書や公正証書で離婚時の取り決めを残しておくのがベストといえるでしょう。
また、差し押さえるべき相手方の財産がわからない場合は、強制執行はできません。
しかし、差し押さえるべき財産がわからない状況を解決するために、2020年の民事執行法の改正によって、財産開示手続、第三者からの情報開示手続という相手の財産を調査する手続が整備されました。
これらにより、養育費不払いの場合の差押え財産の特定はだいぶスムーズとなっています。
しかし、いずれも法的に専門的な手続となりますので、実際に養育費の不払いで困っている方は、離婚問題・男女問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
最後に
養育費の支払いは、子どもの教育費や生活費に直結する重大な問題です。
いま、離婚を考えている方は、将来の養育費不払いは他人事ではないリスクの高い事項であることをご理解いただき、きちんとリスクを予防できるように離婚手続きを進めることをお勧めします。
実際に養育費の不払いに悩んでいる方は、法律を味方につけることできちんと養育費を回収することができることが多いので、この記事で解説した内容を参考にしていただければ幸いです。
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